発達心理学講座

母と子の結びつき

母と子の結びつき

アメリカの心理学者「ハーロウ」は、
母の子の結びつきに関する実験で、
とても奇抜な実験をしています。

ハーロウの実験

ハーロウは、針金製の母親と布製の母親を作り、
生まれたての赤毛ザルを養育させました。

 

針金製の母親にも、布製の母親にも、
同質のミルクを出す装置が付いていて、
サルが自由にミルクを飲む事ができるようになっています。

 

この実験の結果は、以下のとおりです。

 

・サルに母親を自由に選択させると布製のほうを選び、
布製の母親への接触時間は針金製の母親よりも圧倒的に長い。

 

・サルは布製の母親からミルクを飲む事を好み、
同じ質のミルクであるにもかかわらず
針金製の母親からは飲まない。
つまり、2体の母親はサルの飢えや渇きを同じように満足させることができるが、
子ザルが好んだのは布製の母親の方だった。

 

・針金製の母親のミルクだけで育てられたサルは、
しばしば下痢を起こし、体重の増加等の身体的発達はよくない。

 

・サルは怖いものをを見ると、針金製の母親ではなく、
布製の母親の後ろに隠れて保護を求める。

 

 

このハーロウの実験から、針金製の母親にはない、
布製の母親だけが持つ皮膚の接触感がポイントになる事が分かります。

 

子どもの飢えや渇きを満足させる事はできたとしても、
スキンシップ(肌と肌との接触感)の満足が、
子どもの成長には必要である事がわかります。

 

そして、スキンシップがかけてしまうと、
十分な発達ができない事もわかります。

 

さて、ヒトの母子間の間でも、このハーロウの実験のようなスキンシップは見られるのでしょうか。

 

フロイト(精神分析学の創始者)の弟子スピッツは、
子どもの愛情欲求不満について驚くべき観察記録を残しています。

 

スピッツは、子どもが出産される頃から母子関係を観察し、
子どもと母親との感情関係の崩壊を厳しい目でとらえています。

 

子どもが何らかの原因で
愛情欲求不満に陥ると、どのような状態になるのか・・・という観察をしたのです。

 

そして、スピッツは、半年ほど母親と良好な関係にあった子供が、
母親の蒸発などによって母親から分離されたとき、
その子どもが起こす精神的な混乱を以下のようにまとめています。

 

分離後1ヶ月: 子どもは泣きやすく、気難しくなり、
       自分に近づいてくる人に抱きついた。

 

分離後2ヶ月: 泣き声が強くなり、体重が減少し、発達が停止した。

 

分離後3ヶ月: 周囲の人との接触を拒否するようになり、ベッドに腹ばいに横たわる。
       睡眠障害、体重減少、運動緩慢になる。
       表情は硬くなる。

 

長期間の分離: シクシク泣くようになり、より運動緩慢になる。
       外界からの刺激、たとえば人の声やおもちゃの音に反応しなくなる。

 

 

この観察によって分かるのは、
乳幼児が健やかな心を得るのは、
母親との接触によるところが大きいということであり、
子どもの依存対象である母親が急にいなくなると、
特殊なうつ病になるということです。

 

このうつ病を、発達心理学では、依存性うつ病(アナクリティック・デゥプレッション)といいいます。

 

つまり、愛情に飢えるということは、食物に飢えることと同じように、
恐ろしい事であるということがわかります。


ホーム RSS購読 サイトマップ